ひっつき虫

  実は昨日まで 「ひっつき虫」 という言葉を知りませんでした。 たまたま、syunさんのBBSで、syunさんとkazuさんが書き込んでいるのを見て、これらの植物を 「ひっつき虫」 と呼ぶのを知ったのです。 ためしに調べてみると、確かにこれらを 「ひっつき虫」 というのは広く一般的なようです。 私たちが小さかったときの仕事の中で一番大事なことは、遊ぶことでした。 当時の親は子供が家の中にばかりいると、「ホラホラ、家の中にばかりいないで外で遊んできな!」 などと言って子供を外に追い出したものです。 一歩家の外に出れば、草ッ原や空き地が沢山ありましたから、子供の方も心得たもので、集まって三角ベースや缶けりなどをして日が暮れるまで外で走り回って遊んでいたものです。 夕方、日が暮れてそれぞれ家に帰ると、今度は母親がなかなか家に入れてくれません。 まず玄関の外で服についた枯草や土埃を落とします。 自分でも汚れを落としたつもりなのですが、背中の方は自分では出来ません。 服の上からから下へ、母親がパンパンパンと手で汚れを叩き落とします。 その手の痛いこと。 最後にズボンを叩いて、やっと家に入ることが許されます。 このときに最も厄介だったのが今日の話題の「ひっつきむし」です。

イノコヅチ 
 ひっつき虫の中で一番最初に思い出すのは、私の場合「イノコヅチ」です。 イノコヅチの種は米粒の半分くらいの大きさでしょうか、そんなに大きなものではありません。 それが逆三角形に草枝の先にビッシリと並んでいました。 草原や野山、何処にでも茂っていました。 これを知らずに脇をすり抜けたりすると、逆さになったトゲがセーターやズボンに刺さりそのまま種子だけをこそげ取ることになり、綺麗な直線状に着物にくっつきます。 この棘はとても鋭いらしく、ジーパンの生地にもくっつきました。 捕るにも一番面倒だったものです。
コセンダングサコセンダングサ
 センダングサには色々種類があるようで、コセンダングサ、アメリカセンダングサ、センダングサなどです。 私も詳しい違いなどは分かりませんが、解説を読んでみると、当時一番見かけたのはコセンダングサだったようです。 この草は黄(白?)色い1cmくらいの花を咲かせたのではないでしょうか。 花はある程度時間が経つと、花の元を太くさせ花弁が落ちるとともに花の中から種子を出してきます。 この時期の花を取って着物に投げつけると、左の画像のように着物に刺すことが出来ました。 服の生地を突き抜けるようなことはなく表面にパタッとくっつくのです。 これは子供の遊びには最適です。 これをもってオイカケッコをしながら投げては相手の服につけ遊んだものです。 センダングサはそのまま置いておくとやがて右の画像のように種子がアザミの花状になり、これがばらばらになりながら服につくようになります。
オオオナモミ
 このオナモミも良く遊び道具にしました。 落花生くらいの大きさで緑色、表面にはぎっしり棘がついていました。相手に投げつけてくっつけるのには最適のものでした。 大きさがありましたから、服についても捕るのは訳ありませんでしたが、かなりの強さで服についていたと思います。 これを相手に投げて遊ぶのは定番ですが、悪い奴はこれをゴムジュウや竹テッポウの弾に使うのがいまして、服なら何ともないのですが、顔にでもあたるとその痛さはかなりのものでした。
チカラシバ
  さて、私が思いつく「ひっつき虫」の最後は 「チカラシバ」です。 濃い紫色の穂をつける草で、野球をする空き地や工業高校のグランドの周りに無数に生えていました。 この穂状のものは種子の集まったものなのですが、あまり着物について困ったという記憶はありません。 それより長い柄のついた穂の手触りがすべすべで面白かったのです。 猫ジャラシに使えました。 でもこの草の面白さは実は全然違うところにありました。 それは、まだ穂の出ない若草の頃に行ないました。 この草はススキの葉状の葉を30cmくらいまで伸ばします。 その葉は柔らかくかつ強いものでした。 私たちは空き地に生えているこの草の葉をを両手に一掴みずつ握り、これを固結びに結びました。 草の葉で輪ッカを作ったのです。 これを密かに野球をやる空き地の草むらの中に仕込みます。 野球をしていてボールを追いかけるときに、この輪に足を引っ掛けることが狙いです。 この草は前にも書いたように強くてしなやかです。 子供の足の力などでは絶対に切れません(多分大人でも)。 そうなるとどうなるかというと、ボールを追って夢中で走っていた子供は草の輪に足を取られて、物の見事にひっくり返るわけです。 本当に見事にバタッーと転びます。 この衝撃は大変なものでしたが、この草が生えているところは当然草原ですから、結果的に怪我をするような子供は一人もいませんでした。 自分で仕掛けたこともあれば、逆に仕掛けられてひっくり返ったこともあります。 昔の子はこうして自然に怪我をしない転び方が身についたんでしょうか。 これをやっても誰も怒りませんでした。

 少し時季がずれますが、是非夏から秋の草原を歩くときなど気をつけてみてください。 こんな面白い「くっつき虫」が目にとまるはずです。 ただし、チカラシバで輪ッカを仕掛けておくのは止めておいて方がいいでしょう。 最近はとんでもなく大袈裟な話になってしまうでしょうから。
2003.03.09