ダルマストーブ
ここのところ、暖かい日があったり寒い日があったりで、所謂「三寒四温」の頃となってきたようですが、朝夕や夜間はまだまだ寒くて暖房が欠かせません。 今風の家ならばセントラルヒーティングや床暖房などで効率よく部屋を暖めるのでしょうが、我が家は築25年余ですから、そのような便利なものは設備されていません。 どうしても石油ファンヒーターのお世話にならなければなりません。 また、私は庭先に一坪ほどの小さなビニル温室をもっていて、この保温にも石油ストーブを使っています。 昔からある丸い芯が出るタイプのものです。 これらのストーブが不要になるにはまだもう少し時間が必要でしょう。
ストーブといえば一番思い出すのは小学校で使っていた「ダルマストーブ」です。 そのころの教室には煙突を通すための穴が窓の上のほうに必ず着いていました。 丁度30cm四方位で、まん丸にブリキ板をくりぬいたものがガラスの代わりに窓についていました。 冬場にはこの穴に同じくブリキ製の煙突が取り付けられるのです。 煙突は天井から針金で吊るされながらかぎ型に曲がって、教室の後に置いたダルマストーブの上部に繋がっていました。 ダルマストーブは高さ1mくらいでしょうか? 茶色く錆びてはいましたが、鋳物で出来た、中々堂々としたものでした。 中膨れの胴体には小さな窓がついていてコークスを足したり、火の具合を見るための円形の回転窓も着いていました。 ダルマストーブは畳半畳ほどの木の台に乗っていましたが、この台は内側がブリキ張りになっていて、更に皿のように縁が高くなっていましたので、ここに乾燥防止用に水が入れてありました。 更にその回りには金網のフェンスが建てられていて万が一の事故に備えてありました。 ストーブを焚くのは当番の子であったり先生であったりしたようです。 当番にあたった子はまず校舎の外にあるコークス置き場へ行ってコークスを運んできました。 このコークスを入れるのは金属製のバケツなんですが、一般のバケツのように円筒形ではありませんでした。 何と言ったらいいのか、形は丁度レストランでカレーが入れられてくる金属の器。 あれを思い切り大きくしたようなものです。 あれの足を取って持つ為のバケツの柄をつけたもの。 そんな感じです。 それをもってコークス置き場へ行きます。 スコップで5〜6杯入ったでしょうか。 大分重いものです。 それを教室へ運び込んで火をつけます。 正面の窓を開けて、新聞紙や細い木の枝を詰めます。 マッチで新聞紙に火をつけて、木の枝に燃え移るのを待ちます。 この辺は教室中の注目の的ですから失敗できません。 やがてある程度火が強くなったら、もって来たコークスの小さなものを選んで火の上に投げ入れます。 このコークスを入れるのには小さなそれ様の手持ちスコップが用意されていました。 私の場合にはこの小さなコークスの変わりに粉コークスを使いました。 必ずコークスには砕けて粉になったものがあるので、これを使ったわけです。 やがてコークスにも火が移ったら徐々に大きなコークスを入れて本格的に燃やします。 ここまで旨くいけば後は大丈夫です。 やがてダルマストーブはその膨らんだ胴体が灼熱色になるまで燃えてくるのです。 時々、ストーブの下部側面に着いているレバーを揺すって、内部の下網から燃えカスを落とすこととコークスの補充をすればいいのです。 これ一つで教室全体の暖房をしていました。 休み時間になると皆でストーブの周りに集まって暖を取ったものです。 教室は全体としては何度くらいになったのでしょうか。 特に記憶にありませんが、それでも寒くて困ったことはありませんでした。 弁当持参の学校だったらフェンスに弁当箱を吊るして暖めたり、ストーブの上に大きなやかんでも乗せてお湯を沸かしたのでしょうが、給食でしたのでそれはしませんでした。 一日の学校が終わると、当番はレバーを揺すって全てのコークスをストーブの受けに落とします。 ここには水がためられていて、ジュワーッと言いながら火は消えます。 完全に消えたのを確かめて、今朝コークスを入れてきたバケツに燃えカスを入れて捨てに行きます。
これで当番は終了です。 ところで、このダルマストーブの燃やし方には皆中々のこだわりを持っていて、各当番でも違うし、先生とも違っていました。 先生の中にもこのダルマストーブを燃やすのに自身を持っている先生がいて、ああだ、こうだといろいろ言いながら自分のやり方は曲げなかったものです。
2003.03.03
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